【栄養士のキモチ】栄養とカロリーのちょっと気になる関係とは?

筋っぽいのが食物繊維?それだけじゃなかった、腸の中の掃除当番

「野菜には食物繊維が多いので、便秘の予防になる」という話を聞いた事がある方は多いと思います。それを聞いて「ああ、野菜の筋っぽい所が便秘にいいのか」とか「野菜を細かく切ったら食物繊維が壊れるの?」と思っている方がいますが、これは誤解です。では、食物繊維とはどのようなものでしょうか?

食物繊維とは、人の体の中の酵素では消化できない物質です。炭水化物の一種ですが、糖質の様に体のエネルギーや体温になるわけではありません。以前は食べ物の中の不要な物質、カスだと思われていましたが、その後、整腸作用が認められ、第6の栄養素と呼ばれています。(食物繊維が腸内で発酵・分解されると乳酸菌が増え、悪玉菌が減少し、整腸効果につながります。)「繊維」というと糸のようなものを連想するのですが、分子のレベルの繊維なので、筋っぽくない食品にも含まれていますし、包丁で食品を切っても問題ありません。

食物繊維は、水に溶けにくい「不溶性食物繊維」と水に溶ける「水溶性食物繊維」とに分けられ、この2つを合わせて「食物繊維総量」と呼びます。

不溶性食物繊維は、腸の中で水分を吸収し、便通を促す働きをします。また、よく噛まないといけない食品が多い事も特徴で、噛むことで満腹感を得て肥満を防止につながり、歯やあごも丈夫になります。代表的な成分はセルロース・キチン・キトサンなどです。キチン・キトサンは甲殻類(エビやカニなど)の殻に含まれています。その他、不溶性食物繊維を多く含む食品は、野菜類・豆類・キノコ類・芋類などです。

水溶性食物繊維は、ブドウ糖の吸収を遅くして血糖値が急激に上がるのを防ぐので、糖尿病の予防や改善に役立ちます。また、コレステロールの吸収を抑制するので、動脈硬化などの予防に役立ちます。更にナトリウムを排除し、血圧を下げる効果があります。特にこの効果が期待されるのはアルギン酸で、海藻類に多く含まれます。その他の成分では、ペクチン・グルコマンナンがあげられます。ペクチンは果物をジャムにする時に固まらせる成分、グルコマンナンはこんにゃくに含まれる成分です。水溶性食物繊維を多く含む食品は、野菜類・果物・豆類・芋類などです。

では、実際の食事メニューを見ていきましょう。食物繊維は、サラダで生食するような野菜よりも、火を通す青菜や根菜に多く含まれています。また、毎日の食事で食物繊維を取り入れるには、主食に目を向けることをお薦めします。白米より玄米や分づき米、麦や雑穀をプラスしたご飯、白いパンより全粒粉のパンなどを選ぶと食物繊維が多く摂れます。麺類でいえば、うどんよりも蕎麦の方が食物繊維は多いです。

無理なく野菜・キノコ・海藻等を摂るには、定食の形で汁物や煮物を摂るのが理想です。玄米や雑穀入りご飯に根菜が沢山入った豚汁やけんちん汁、おでん、おから・切干大根・ひじきの煮物などを選ぶといいです。

鍋物や蒸し物も野菜のカサが減って食べやすくなります。中華メニューであれば野菜を沢山使った炒め物、洋食メニューであれば具沢山のポトフなどがお薦めです。肉料理などの付け合わせの野菜も残さず食べるようにしましょう。また、間食を摂る場合は果物や和菓子(小豆などの豆類を使ったもの)、飲み物では抹茶やココアなどをお薦めします。

食物繊維は腸の中をすっきり掃除し、細菌のバランスを整えてくれると書いてきました。毎日積極的に摂りたいものですが、摂り過ぎは禁物です。下痢などを起こすと、体に必要なミネラルなどの成分まで排出してしまいます。通常の食事で過剰摂取になる事は少ないと思いますが、サプリメントや栄養補助食品を摂る時は量に注意しましょう。